本年度は主に自動車技術の電動化という大きな流れが企業間ネットワークに対してどのような影響を与えたのかとの問題について、データ収集とヒヤリング調査を行い、政策論と企業戦略論の二つの側面から考察を行った。まず、企業間における分業システムが大きく変化しつつある一つの背景として、環境問題とエネルギー問題における最新の政策動向を調査し、こうした政策的動きが自動車技術の研究開発と企業間の知識ネットワークへの影響を考察した。環境規制が企業の国際競争力に対してどこまで促進するのかとの問いかけについては、必ずしも一致した見解が得られていないものの、動車メーカーとエレクトロニクスメーカーとの関係はより戦略的に変化していくことが予想される。実際の技術開発は様々な要因から影響をうける複雑なプロセスあるため、技術開発活動において選択される技術の方向性に注目すべきである。 一方では、不確実性の高い技術開発の目標に対して、自動車メーカーがいかに対応するのかとの問題については、トヨタ自動車におけるハイブリッド車の開発とその技術進化過程について調査し事例研究を行った。ハイブリッド車の開発においては、ハイブリッド周辺技術に関する内製R&D組織の構築が重要であったことが示されている。この結論ほこれまで企業間分業における知識マネジメントの議論とも一致している。すなわち、より多くの部品メーカーと協力せざるを得ない場合、内製知識をもつ企業組織は長期にわたって競争力の源泉を維持することが可能であるとされている。
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