本年度の研究目的は、取引企業間の協働による価値創造と分配のためのルールを国や地域、あるいは産業ごとに比較することであった。具体的には、自動車産業の部品取引における国際比較、日本の自動車産業と工作機械産業の比較を行うことであった。 第一に、自動車産業における国際比較である。研究代表者はこれまでにも欧州や中国を中心としてインタビュー調査を行ってきた。本年度は、そのデータの精緻化を行い、論文の投稿をめざすものであった。今回は、中国・広州における自動車メーカー、自動車部品メーカーへのインタビューを行った。2010年の中国自動車産業は激変の一年であったといえる。2009年から自動車販売台数はアメリカを抜いて世界一位になり、価値創造の規模が急拡大した。また、従業員のストライキ問題も発生し、創造した価値をステークホルダーでどのように分配するかが大問題となった。基本的に、中国は、取引企業間や企業内の労使間の交渉力格差が激しい。しかし、近年の動向を見る限り、少しずつ変化の兆しが見える。このような最新の動向を加味しながら、論文の投稿を行い、現在は、修正中である。第二に、統計データの分析である。日本の自動車産業の統計データ(販売台数や.、自動車産業、自動車部品産業の付加価値率、在庫回転率など)分析はすでに終了しており、今回は、アメリカ自動車産業の統計データ、日本の工作機械産業の統計データの分析を行った。両データともすでに入手済みであるが、それらの比較分析は未完成の状態であり、早急に行いたい。第三に、工作機械産業を中心としたインタビュー調査である。本年度は、日本の大手工作機械メーカーへのインタビューと欧州に位置する日系部品メーカーのインタビューを行った。基本的に、工作機械産業は自動車産業に比べて市場取引的な要素が強いことが明らかにされた。現在は、これらのデータをまとめる最中であり、なるべく早い段階で、論文の投稿を実施したい。
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