世界的に牡蠣養殖で有名な宮城県石巻地域においてすでに「宮城県産生かきトレーサビリティ情報システム(以下、牡蠣トレーサビリティ・システムと記す)」が導入され、稼動しているが、システムを導入した牡蠣パック加工業者の多くが自社に見合った適切な牡蠣トレーサビリティ・システムを導入できずに、システムを破棄するか他のシステムに変更しているケースが多い。その最大の原因は、ベンダーによるトレーサビリティ・システムの開発が盛んとなったためシステムが乱立しており、多数ある商用の牡蠣トレーサビリティ・システムの中からどのシステムが自社に合っているのか詳細に調査せずに安易にシステムを導入し失敗したのである。この問題を解決するために本年度では以下について研究を行った。(1)関係事業者に対し選定評価基準の予備調査を行い、牡蠣トレーサビリティ・システムの評価に関する客観的な知見を得て、牡蠣トレーサビリティ・システムの選定評価基準の素案を構築した。その中には、最近、Software as a Service(以下、SaaSと記す)によるトレーサビリティ・システムが開発・利用されていることを鑑み、SaaSによるトレーサビリティ・システムの選定評価基準をも含めた。また、(2)導入プロジェクトを成功に導くための推進手順を明記した牡蠣トレーサビリティ・システム導入方法論を構造化分析手法であるIDEFOを用いて詳細に記述した。宮城県内の加工業者のみならず、広島県等の他県や他国の牡蠣トレーサビリティ・システム導入企業の一助となるよう英文でその導入方法論を明示した。さらに、(3)多くの地元企業経営者が加入している石巻市倫理法人会経営者セミナーにおいて「牡蠣トレーサビリティ・システム再考」という題目で、牡蠣トレーサビリティ・システムの問題点を指摘した。
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