本研究は、企業の成長要因として着目されている組織能力概念について、組織能力をマネジメントによって操作されるものとして定義づけし、そのマネジメント要因を精緻化することを目的としている。特に組織能力の向上という現象について、どのようなマネジメント要因と関わるか、換言するとどのようなマネジメントの仕掛けにより組織能力は向上するのか、という問題を検証することを目的としている。平成22年度はその目的に沿って、(1)国内外においての資料収集、(2)インタビュー調査による個別事例研究、(3)アンケート調査による大量観察分析、(4)文献調査による既存研究の組織能力概念の検討と自己モデルの妥当性確認、(5)国内外の学会等での発表による批判的検討、といった5つの研究計画を立案したが、ほぼ計画通り実施した。(1)はネットや図書館ネットワークを通じ必要な資料の収集を行った。(2)は台湾のエレクトロニクス企業を対象とし検討した。特に台湾に渡航することで現地企業や日本企業の台湾子会社についてインタビュー調査を行った。また他のプロジェクトに参加することで日本企業3社、韓国企業3社を対象としてインタビュー調査ならびにアンケート調査を行った。(3)は他のプロジェクトに参加することで1部2部上場製造企業を対象にアンケート調査ならびにその検討を行った。(4)は既存研究を検討した上で、昨年度構築した本研究独自の組織能力概念について批判的検討を行った。(5)は日本経営学会関東部会例会、日本社会学会全国大会、企業理論研究会といった学会や研究会にて発表することで他者の意見を参考にする機会を得た。平成22年度の調査は、本研究の概念規定をより精緻化しつつ、その対象となる個別企業調査、個別企業インタビュー調査、アンケートによる大量観察調査を同時に遂行した。本研究の目的達成を考慮した場合、最終年度のまとめに入る準備という意味で十分な意義があったと考えられる。
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