平成22年度も引き続き、人的資源管理の領域で議論されている人事制度をレビューし、その普及プロセスを整理した。具体的には、職能資格制度と目標管理、360度評価であるが、これらの人事制度は多くの日本企業で採用されているが、企業によってその活用方法が異なり、多様性が存在する。たとえば、これらの人事制度には評価尺度が必要であり、各企業が新しい人事制度を導入するにあたっては評価の妥当性に関しても検討されている。コンピタンシー評価などが典型例であるが、これらの評価尺度は企業によって異なる。これらの評価尺度の相違が新しい人事制度の弾力的な運用を促している側面があると思われる。このように、新しい人事制度が本来の意図通りに活用され得ない要因をいくつか検討した。一方で、これらの新しい制度が多くの企業に伝播し、採用されるプロセスを説明するフレームワークについては、すでに制度化理論が極めて有用であろうという指摘は昨年度に行っている。類似の環境にある個体群は類似の制度を採用するという主張はマクロのパターンを分析するためには望ましいが、ミクロのプロセスに関して了解可能なフレームワークが必要であることが判明した。そこで、ネットワーク理論などを中心に、組織間で新しい制度などが普及するプロセスを説明するロジックを構築している。組織間の情報交換を媒介する装置として、専門誌や学会などの存在が考えられるが、それらがどのように機能しうるか、この点については次年度の課題としたい。
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