平成23年度までに、オフショア化の事例を広く収集し、それらのデータを用いて、設定した複数のリサーチクエスチョンへの回答を導出した。それと同時に、オフショア化研究のサーベイを行い、先行研究で明らかになっている点およびそうでない点について整理した。その結果、オフショア化の成否をみるためには、各企業が行ったオフショア化の継続可能性(中断可能性)を結果変数とすることが好ましいと判断した。 平成23年度においては、オフショア化研究を戦略論の立場からサーベイし、論文にまとめた。また、オフショア化を継続させようとする各企業の取り組みの様子(「オフショア化努力」と名付けた)について、定性的比較分析を用いていくつかの典型的なパターンを明らかにした。さらには、オフショア化を行う企業が自身のオフショア化を中断させまいとする行い(意思決定)について、KauffmanのNKモデルを用いてモデル化した。こうした作業を通して、日本企業による成功的なオフショア化戦略をプロトタイプ化することができた。さらには、研究期間を通して調査してきたオフショア化現象を題材として、国際化時代における戦略的マネジメントの解説を行う書籍を執筆した。 本年度に行った研究は、オフショア化研究に対して次の点で新たな貢献をなすものであった。すなわち、オフショア化を行う企業の「意思決定」および「努力的取り組み」に焦点を当て、データの整理、分析、およびモデル化を行ったという点である。オフショア化現象は近年確認されるようになったものであり、先行研究では「既存の理論を援用して説明づけようとする」という取り組みがなされてきた。これに対して本研究では、独自の分析枠組みを構築するとともに、事例を独自に収集し、分析にかけ、オフショア化そのものの理論構築を図った。
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