本研究の目的は、日韓米の製造業における製品特性と組織のコア・コンピタンス、そして情報システムの導入・利用との関係を明らかにすることである。2010年度には、日本・韓国企業に対するインタビュー調査を継続しながら、日本企業と韓国企業に対するアンケート調査を行った。インタビュー調査では、日本企業の製品開発プロセスとITシステムの活用との関係を分析し、韓国企業に関する分析結果と比較した。 2010年度の分析結果として、第一に、製品アーキテクチャフレームワークで日本と韓国企業を比較した。クローズ-インテグロルアーキテクチャは、製品ライクサイクルが長く、製品開発も相変らずアナログ的な要素が強調されているが、オープンモジュラーアーキテクチャの製品の場合、逆に製品ライフサイクルが短く、製品開発もそれに対応したスピードが要求される。韓国企業はそういう製品アーキテクチャに対応するための組織構造及び経営意思決定を追い求めたし、これが現在の韓国グローバル企業のコア・コンピタンスとして形成され、グローバル競争優位に結び付いたことが分かった。第二に、グローバルビジネス環境の拡張によって新興国に対応する能力が重要になってくるが、韓国企業は日本企業に比べて、グローバル市場に対応するカスタマーコンピタンスを構築しており、従来乏しいテクノロジーコンピタンスを補いつつ、両者をつなげるリンケージコンピタンスを強化してきたといえるだろう。韓国企業では、こうしたリンケージコンピタンスを強化するための経営の意思決定およびIT利用を行っていることが分かった。2010年度では、こうした結果に基づき、日本企業のコア・コンピタンスを強化するためにITシステムとしてIMISモデルを提案している。2010年度の成果は、著書(共著)1冊、論文2本、国際学会の報告2回によって発信している。
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