インドの財閥における、所有・家族支配の特質、ならびに、この両者が、インド財閥傘下の上場企業のコーポレート・ガバナンスについて研究した。 そこで明らかにできたのは、インド財閥において「所有と支配」の未分化の状態が傘下企業の株式保有を通じて依然として続いていることである。しかし、財閥は事業の規模拡大や多角化をする際、多くの専門経営者を導入し、近代的な経営方針へ移行しつつあるように見える。つまり、経営体制については、所有と経営の分離をせず、所有する一族や財閥内部昇進者と専門経営者との合理的結合を図りながら財閥経営をするに至っているのである。しかしながらインド財閥は意思決定の面、人事の面など情報開示に対して閉鎖的なため、財閥経営に閲するすべてのことを明確にすることには限界があるのも事実である。 さらに、小株主に対する説明責任の欠如、情報の透明性の欠如などといったコーポレート・ガバナンスの諸要素が徹底されていないことなどが基本問題として挙げられる。そこで、インドの財閥では、有効的なコーポレート・ガバナンスを企業経営に反映させていくことが現時点では、可能ではない。 インド企業の研究する際の限界として、今もインド企業の経営者らはインタビューやアンケートなどについて非常に抵抗感が強い。そのため研究や調査するには大きな障壁を感じたことが事実である。とはいっても今まで、インド財閥を対象とした体系的な企業集団研究はほとんど見られなかった。インド企業に対し、社会学的側面からの研究や経営史学的な側面からの研究は多数見られるものの、先進国企業を対象とした企業集団研究、コーポレート・ガバナンス研究に比較し得る研究は、残念ながら未だ本格的に行われているとは言い難い。その結果、今後も、インド財閥企業の経営・所有・支配に関する様々視点からの研究していくことは日本経済にとって大きな価値があることが確信している。
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