研究概要 |
本研究は、日本企業の企業間組織再編(企業再編、M&A)がもたらす企業価値向上効果を実証的に分析することを目的として平成21年度より研究を開始した。 当初の研究実施計画に基づき、先行研究のサーベイを進める中で、財務データを用いてM&Aの企業価値向上効果を測定する研究はHealy, Palepu and Ruback (1992)以降目立った研究上の進展が見られないことが明らかとなった。こうした背景には、M&Aに際しての企業の利益調整行動に代表される会計政策がM&Aの効果測定を難しくしているという状況があると考えられる。 従って、本研究では財務データを用いた企業価値向上効果測定の前提となる、M&Aに際しての企業の利益調整行動に関する実証研究を先行して行うこととし、平成21年度にはこうした実証研究を行う上での先行研究のサーベイ及びデータベースの整備、利益調整行動に関する仮説の構築及び仮説を検証するためのパイロットテストの実施を行った。その結果、日本企業においては欧米企業を対象とした先行研究とは異なる利益調整行動が観察されることが明らかになりつつある。このような利益調整行動を明らかにすることは、上記のような財務データを用いた企業価値向上効果測定の手法に対する貢献があるばかりでなく、M&Aに際して日本企業において行われている利益調整行動について、先行研究にはない新たな仮説を構築・検証する点で先駆的な成果をもたらすものと考えている。 なお、本年度はこうした仮説及びパイロットテストの結果について、複数の学会及び研究会等において発表・報告を行った。
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