本研究は、日本企業の企業間組織再編がもたらす企業価値向上効果を実証的に分析することを目的として、平成21年度より開始したものである。 本年度(平成23年度)においては、企業が株式を対価とした組織再編を行う際に支払うプレミアムがどのようにして決められているのかという点に着目し、その実証研究を進めてきた。1999年改正商法において株式交換制度が認められて以来、株式を対価とした企業再編は大きく増加したが、こうした再編における企業行動の実態は必ずしも明らかにされていない。日本においては、TOB(株式公開買付)を行う企業が、ターゲット企業の株主に対して支払うプレミアムに関する先行研究は存在するものの、株式交換などの株式を対価とした企業再編において、どのような要因がプレミアムの水準に影響を与えているのかを検証した研究は研究代表者がサーベイする限り行われていない。本研究では、こうした点にフォーカスし、日本における株式を対価とした企業再編でのプレミアム設定の状況を明らかにするとともに、その水準に対して影響を与える要因を実証的に検証してきた。 その結果、企業再編を行おうとする会社の企業再編対象企業に対する持株比率、企業再編対象企業の成長性、企業再編対象企業における現預金・有価証券の保有比率、企業再編対象企業における負債の比率がプレミアムに影響を与えており、その影響は本研究を進める過程で提示した仮説と整合的であることが明らかとなった。このような結果は先行研究では報告されていない内容であり、本研究の先駆性を示すものであると考えている。 なお、平成23年度の予算執行において、物品費がそのすべてを占めているが、これは当初予定した出張及び打ち合わせが不要となったためであることを付記しておく。
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