平成22年度においては、1)研究内容の国内での発信および海外発信、そして2)新たな実地調査を行った。 第一に、研究発信の概要は以下の通りである。まず国内では、日本経営学会関西部会にて研究発表を行った。インクジェットプリンター産業におけるインクジェットプリンター本体とインク・カートリッジとの間で生じた相互作用メカニズムを明らかとし、その実態を報告した。次いで海外では、European Academy of Managementにて「多角化企業におけるイノベーション」という題目で研究発表を行った。具体的には、リコーにおける複写機のデジタル化プロセスを調査した結果として、ファクシミリ産業で蓄積されていたデジタル技術を複写機産業でのイノベーション活動に転用していたことを明らかにし、そのうえで、そうした産業間の技術転用を力強く推進した同社の集権的経営体制を分析して報告した。このようにいくつかの事例分析を通じて、産業間相互作用を通じた経営資源の蓄積と利用プロセスを明らかにした。 第二に、新たな実地調査の概要は以下の通りである。まず国内では、中田製作所および東レにおけるイノベーション活動を分析し、それが他産業にどのような影響を与えたのかを調査した。各イノベーション活動については、それぞれケースとして執筆した。次いで海外では、インド市場を調査した。その目的は、プリンターなどの日本の事務機器製品が現地市場でどのように受け入れられ、それが他分野にどのような影響を与えているのかを分析することであった。現地でのヒアリング調査や実地調査を通じて、日本市場における産業間相互作用のあり方と海外市場における産業間相互作用のあり方とが比較可能となり、非常に重要な知見が得られた。
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