平成24年度は、「産業間における競争的相互作用を通じた経営資源の蓄積と利用のダイナミクス」研究の最終年度であるため、研究論文の執筆などによる学術発表を目的として研究活動を進めた。研究論文では、インクジェットプリンター業界における本体ビジネスと消耗品ビジネスとの相互作用を題材として、サードパーティ業者を交えた競争的相互作用プロセスについて論じた。 インクジェットプリンター産業は単一の産業であるように見えるけれども、その産業システムのなかには、本体と消耗品という2つの異なるサブ産業が存在している。このように一つの産業が本体と消耗品とに細分化されるような場合、利益を消耗品から獲得しようとするビジネスモデルが一般に展開されることが多い。インクジェットプリンター産業も、そうしたビジネスモデルを採用している代表的な産業である。研究論文では、このビジネスモデルを消耗品収益モデルと呼んだ上で、本体と消耗品、さらにはその消耗品市場に参入を試みるサードパーティの間の相互作用に注目して、研究論文を執筆したのである。 一般に消耗品収益モデルは優れた仕組みとして指摘されることが多い。しかしながら、少なからぬ企業が、消耗品市場においてサードパーティとの競争を余儀なくされているようにみえる。インクジェットプリンター業界もまた、インクカートリッジ市場において、サードパーティとの競争に直面している特徴的な産業である。研究論文では、そうした競争がなぜ起きてしまったのかということについて論じた上で 消耗品収益モデルの陥穽とでも言えるような状況に陥らないためにはどうすれば良いのか、という問いについて発展的に検討した。
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