平成22年度は、前年度の成果を踏まえ、ひきつづきイギリスにおけるNHS (National Health Service)下の病院の先進的なマネジメントを調査した。イギリスの医療制度は依然病院として国営のNHSを維持しているものの、その内実はブレア政権時より第1次医療、第2次医療ともに非常に民営化が進んでいる。そのなかで、第2次医療の病院は、財政や戦略などにおいて民間企業のような経営が求められている一方で、患者参画型の病院経営をも実現することにより、患者(地域)からの信頼も獲得している。今年度は、同様に民営化の流れにある第1次医療の病院に焦点を当てて、いかにして患者からの信頼も得ているのかについて関心をもち、医療現場の仕組みや医療従事者の行動、病院の患者との関わりなどについてインタビュー調査および文献収集を重ねた。その結果を、下記の研究成果としてまとめている。 上記の研究は、日本の病院経営での問題点を解決する際に大いに役立つという意義および重要性をもっている。小泉政権時以降、日本の病院は、より効率的な経営を求められ、医療法人のように病院のトップ・マネジメントにおけるガバナンス改革が求められたり、より弾力的な組織構造が作られたりしているためである。また、すべての病院にて、透明性の確保が義務化されているためである。 平成21年、22年ともに、インタビュー調査を重ね、医療従事者の現場での声を聞くことに多くの時間を費やした。平成23年度は、一連の実証研究の成果をまとめていきたい。
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