企業のグローバル化が進む中、韓国や中国、台湾などのアジア企業群は先進国企業に遅れながらも短期間で急成長を遂げ、現在世界市場に台頭してきている。その急成長の背景には、政府のバックアップ体制や時代背景、OEM主義や提携の活用など、国特殊性やビジネス・スタイルにおける各国の違いが影響を及ぼしているだけでなく、それら企業群の主体的な活動や戦略が重要な要因となっている。特に、イノベーション能力の構築は目覚ましいものがあり、先進国企業の脅威となっているが、その構築プロセスは明らかにされていない。これまで進めてきた研究において、韓国や台湾、中国のエレクトロニクス企業を中心とした聞き取り調査によってそれらの背景を解明しようとしてきたが、インタビューのみでは実証に限界があるだけでなく、「イノベーション」というデリケートな題材に対して研究を質的に深めることにも限界があった。本研究では、これまでの知見に対して実証を踏まえた理論展開を行うために、「特許」という定量的な観点を取り入れ、特許取得研究者の動きに注日することで、イノベーション構築プロセスを論証していくことを研究目的としている。 本年度は、各国の資料の分析、および、韓国特許庁の産業財産人力課長であるJung Sung-Chang氏(三星経済研究所出版の著書『知識財産戦争-韓国の特許経済力と対応戦略』の執筆者)のインタビュー調査を通して、近年の韓国の大企業は日本の大企業と類似した特許戦略を取っている点、米国が最も重要な特許出願先であり続いて日本での出願が重要である点、また、イノベーションと特許の間には一定の関連性を認められるという点を確認することができた。更に、韓国の三星電子のアメリカと日本における特許出願状況のデータベース化が終わっており、次年度にはその分析が可能となる。中国、台湾企業における特許戦略、特許状況と合わせて分析を行う予定である。
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