人材活用施策と企業業績の関係に関して研究を進めてきた。成果は「従業員の処遇と企業業績の関係」Osaka University of Economics Working Paper Series No.2013-3として発表した。 基本的な成果は以下のとおりである。人材活用施策(特に従業員の働きやすさ)は離職率を低下させるという先行研究と整合的な結果が得られたが,人材活用施策と離職率を仲介する要因として,有給休暇取得が存在することを指摘した点が新しい貢献となっている。ただし,有給休暇は自発的な離職にのみ仲介効果(mediating effect)を持ち,非自発的な離職には仲介効果を持たないことが分かった。 また,自発・非自発離職以外に,新卒離職率(新規学卒者やの3年以内の離職率)についても分析を行った点が新しいと考える。新卒離職率については自発的離職率とほぼ同じ傾向を持ち,新卒の離職は自発的な離職行動であることが示唆された。 人材活用施策は自発的離職率を低下させることで,一人当たり売上を向上させる効果が存在するが,効果は比較的低い。また,人材活用施策は直接・間接に有意にROAに影響を与えることはない。以上から,人材活用施策は離職率を高めることで人的制限の蓄積を促進する効果を持つものの,ROAや一人当たり売上といった短期的な財務成果を向上させる効果はそれほど見込めないことが示唆された。
|