現地化や国際人材に関する文献狩猟、日本の多国籍企業4社のパイロット調査を行った。4社に共通していることは日本人海外派遣者比率が2006年以降、低下傾向にあることである。このうち2社に関しては、社長の現地化比率が高まり、逆出向者と第三国籍従業員数が大幅に増加している。これは2003年の調査開始以降、現地従業員の活用が最も促進されていることを示す。すなわち、本国従業員のみならず現地従業員を含めた国際人材の活用が徐々に進みつつある。 このうち、E社の事例研究を行なった。その結果、本社が本国従業員と現地従業員の国際人材の育成を強化し、充実させることにより日本人海外派遣者比率の低下と社長の現地化比率の上昇を促すことが明らかになった。また、このことは2006年に行ったG社の事例研究とほぼ同様の結果をもたらした。さらに、このことからG社とE社の共通点と差異性が明らかになった。まず、共通点としては本国従業員、現地従業員の国際人材の育成を職位別に行っている点である。異なる点の一つは、E社は2007年に現地従業員の研修制度に加えて、逆出向制度を導入していること、そしてもう一つは研修を受けた海外派遣登録者の中からどれくらいの割合で実際に海外派遣を実施したのかという研修実績の測定を行っていることである。この2つについては導入されたばかりであるため、これらが国際人材の活用にいかに影響を及ぼすのかについての検討は今後の課題である。その他、海外派遣者比率、社長の現地化比率などを測定した3年という期間が適切な期間であることが分かった。 最後に本社の人的資源管理の充実度が海外子会社の国際人材の国籍の割合に影響を及ぼす可能性を明らかにする本研究は時系列な調査を必要とする。この結果によりその一時点でのデータを示すことができた。今後も継続的な調査を行うことが課題となる。
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