研究課題
1996年の保険業法改正以降、保険料率(価格)競争がさかんになっている。しかしながらこのような潮流は、必ずしも保険市場が競争一辺倒になってきていることを意味している訳ではなく、現実の保険市場は、完全に競争的でもなければ、完全に協調的でもない。以上のように考えた場合、現実の保険市場の姿を明らかにするためには、具体的にどのような利害の対立あるいは一致が存在するかについて知る必要があり、またその上で、これらの利害が各保険会社の経営戦略にどのような影響を与えているのかを考察する必要があると言える。上に示した背景を基礎に、本研究では、「協調」と「競争」とが混在する保険市場を想定した上で、各保険会社がどのような場合において「競争」あるいは「協調」戦略を採用するのかについての一般的な理論の構築を主たる目的とした。また同時に、そのような戦略が社会的に望ましいものであるか否かについても検討していくこととした。本研究ではより一般的な理論構築を目指していることから、研究の方法として、(ミクロ)経済分析を採用した。なお今年度は研究期間の初年度であることから、分析対象を保険市場に限定することなく、より一般的な意味での市場分析を行うことで、「協調」および「競争」の(経済学における)より明確な特徴づけを行った。得られた研究成果は2本の論文および1本の研究発表として公表されているが、その内容を簡単にまとめると以下のようになる。まず、各企業は、一面においては「競争」を選択する一方、別の一面では「協調」を選択する可能性があることを明らかにした。次に、そのような「協調」が必ずしも自発的に行われるとは限らないことを明確にした。さらにその上で、「協調」の選択が社会厚生の点から見て必ずしも望ましいとは限らないことを示した。
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Discussion Paper, Faculty of Economics, Nagasaki University 2010-1
ページ: 1-15
Discussion Paper, Faculty of Economics, Nagasaki University 2010-3
ページ: 1-7
http://www.econ.nagasaki-u.ac.jp/introduction/discussion.html