2010年度における本研究は、「マス・カスタマイゼーション」をめぐる企業のマーケティング活動と、それと対を成す消費者行動とを探究しようとする全体的研究構想の中で、まず第一に、2009年度に成果のあった流通論的研究の局面において、引き続き研究の深化・拡張を図ってきた。すなわち、製造業者が自社にカスタマイズ化された流通サービスを提供させるために、流通業者と長期的関係を結ぶ様子を描写した因果モデルの理論・実証研究を、昨年度から継続して展開した。この研究は、マーケティング学界を代表する学会、商業学会が新たに設置した「テーマ部会」の第一回報告会に招聘されることとなり、研究報告および、パネルディスカッションへのパネリストとしての参加を果たすという、目に見える形で成果が結実した。第二に、マーケティング戦略論的研究の局面においては、マス・カスタマイゼーションに特徴的な、製品そのものとともに製品を構成する成分(部品)を消費者に向けて強調するという実務に関連づけて、製品ブランディング戦略と成分ブランディング戦略の融合と、その影響について、近年興隆中だが未開の成分ブランド研究のわずかな知見を手掛かりにしながら理論モデルを構築して大規模な実証分析を実施した。この分析の結果は、2010年度中に目に見える業績としては結実しなかったものの、今後につながる取組みであり、学界に貢献を成すべ継続的に研究したい意向である。第三に、消費者行動論的研究の局面においては、いったんマス・カスタマイゼーションから離れて、製品を独自に創作する意向の高いホビー製品の消費者の行動を分析し、論文の形に纏めた。これによって、我が国に独特のホビー市場に出現した、消費者サイドによるカスタマイゼーションに適した企業サイドの製品開発に注目することができ、今後、この新たなマス・カスタマイゼーションについて、国際学会にて発表する計画である。
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