本研究は革新的な中小企業によるビジネス・ネットワークの構築とネットワークにおけるコーディネーションの問題に焦点を当てている。小規模企業が大規模企業に比してイノベーションを生み出す上で有利であると主張する研究がいくつかある。たとえば、ある研究は組織におけるエージェンシー・コストやインセンティブの観点から説明している。また、イノベーションにはスピードの経済が重視されるので、大規模で硬直的な組織よりも小規模で柔軟な組織の方が適しているという考えもある。しかし、小規模企業であれば、イノベーションに優れているのであろうか。本研究における問題意識は、イノベーションを生み出す中小企業とそうでない中小企業との間にはどのような違いがあるのかにある。そのために、革新的な中小企業がどのようにビジネス・ネットワークを構築し、どのように外部資源の活用を行なっているのかを明らかにしようとした。 革新的な中小企業に特徴的なことは、大企業や研究機関の資源や能力を主体的に活用し、それらを内部の資源や能力にうまく結合させていることであった。そのために、特定の大企業との安定的な強い関係を維持しつつ、分野の異なる企業などとの弱い紐帯も重視していた。また、中小企業の革新性は、経営者のもつ能力など属人的要素に大きく左右されることも研究を通じて観察されたことであった。 本年度は本研究の最終年度であったので、これまでの研究のまとめ、そして研究成果を外部に向けて発信することに注力した。国際学会での研究報告を複数回行なった。国際学会を通じての海外の研究者との交流は、本研究の精緻化と発展に大きく寄与した。
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