本研究の目的は、消費者が購買行動の前後段階において経験するであろう合理的・非合理的行動発現誘因の相互効果を情報処理過程の下で明らかにすると同時に、認知メカニズムや購買態度に影響を与える潜在的情報処理の経路に関する考察を行動の合理性と選択手続きに焦点を当てつつ行うことで、その対照的モデルである非合理的購買情報処理過程をより明確に規定するための方法論に関する提案を行うことにある。本年度は、前年度実施した事前調査に引続き、評価難易度と選択オプションの相違により発現される選択行動の類型的特徴と環境的要因の誘因効果を解明すべく、2グループに割付けられた被験者を対象に、模擬店舗におけるシナリオ実験による検証を行った。本実験では、まず同一条件の複数の商品に、難易度の異なる選択オプションを追加し、その後発現される選択行動の相違を観察すると共に、属性情報の評価作業に影響を与えると想定される環境的要因や通念の操作による選択行動の変化過程と属性間の優劣関係に関する検証を行い、その後さらに自由回想方式の設問項目を通じて誘因認知の有無を確認した。その結果、誘因操作に対し、各オプションが両情報処理過程にどのように影響するかについて、次のような結論が導出された。1.被験者の認知欲求と認知成熟度の相違が購買傾向と連動し、それぞれ合理的・非合理的購買情報処理の二つの形態に分類されることが確認された。2.評価難易度の異なった属性関連オプションを追加した場合、それぞれ具体化・抽象化経路から態度へ帰属されるような情報処理が行われた。3.それぞれの選択オプションに、環境的要因を追加した場合、既存の成果不一致が棄却され、共有主観を経て態度に帰属される傾向が確認された。以上の成果に基づき、誘因効果の発現条件を明らかにし、環境的要因による行動操作の有効性に関する提案を行った。
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