本研究は「小売業者が売上高を伸ばさなくとも利益は維持・成長できる仕組みを模索する」という研究目的にあわせ、特に今年度は交付初年度ということもあり、資料収集と企業の実態調査に努めた。本研究は上記の研究目的を果たすために、理論研究と実証研究という2つの柱を構築する必要があり、今年度は、(1)売上高が伸びていない、あるいは減少している企業の中でも、効率化を遂げることにより利益を伸ばそうとできている企業に関する調査を進める。(2)そういった企業の試みに関する既存研究の蓄積についてまとめる。(3)理論的背景をもとに、1の企業に対してヒアリングを行うネットワークを築く、という3つを行った。特に本研究課題である「トヨタ生産方式の応用」ということに関しては、リーマンショックに続くいわゆる「トヨタショック」の影響もあり、否定的な味方に傾斜した資料ばかりが目立ってしまったため、その本質的な意義を検討するのに時間を要した。また、ヒアリングを行うに際しても、企業業績の急激な悪化の影響があり、協力予定だった企業の協力が得られないことも多く、具体的な成果を出すに至らなかった。しかしながら、経営効率化を遂げることによって「売上を伸ばさなくとも利益を維持・成長できる仕組み」というのは、昨今の経済情勢だからこそ求められるものであり、その意義・重要性はさらに高まってくるものと思われる。そのため、次年度以降の礎となるような基礎的な理論研究をさらに進めることを次年度の課題としたい。
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