本研究では、国際取引におけるイノベーション普及と制度形成の共進化について考察した。本年度の研究では、国際ビジネスで使用される貿易関連書類の中でもe-SWB (electronic Sea Waybill)、海上運送状(Sea Waybill)そして元地回収船荷証券(Surrender Bill of Lading)といった新しい種類の運送書類に着目し、それらの普及の要因についてアンケート調査による定量的分析から明らかにした。アンケートは運送書類を使用している企業141社(東証一部・二部に上場している卸売業や製造業の企業など)から回答を得ることができた。そこでは、制度(商慣習、国際規則、そして条約・法律など)が新しいイノベーションの普及に影響を与えている要因の一つであることがわかった。また、新しいイノベーションが制度に与える影響については、ロッテルダム・ルールズ(Convention on Contracts for the International Carriage of Goods Wholly or Partly by Sea)やインコタームズ2010(Incoterms 2010)といった国際的なルールに着目し、これらの条約や国際規則と新しい種類の運送書類との関係について考察した。ここでは、これらの国際ルールがe-SWB、海上運送状そして元地回収船荷証券といった新しいイノベーションの影響を受けて形成もしくは改訂されていることが明らかになった。以上の研究結果から、国際取引におけるイノベーションと制度が相互に影響しながら共進化を遂げ動的に普及していることを確認することができた。これらの研究成果については国内の学会や研究会(国際商取引学会【2010年】、日本貿易学会【2011年】、関西国際取引争訟研究会【2011年】)、海外のフォーラム(5^<th> e-Trade International Forum & 4^<th> Logistics International Forum Green IT and Future of E-Trade and Logistics in Northeast Asia【2010年】)で発表した。
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