平成21年度は、ネットリテラシーの概念整理と、探索的調査を行った。概念整理に関しては、今までの先行研究の中で、マーケティング、消費者行動、コンピューターサイエンス、メディア社会学の領域から欧文、邦文を問わずに文献サーベイを行った。その結果、リテラシー概念を構成するネットスキル概念、ネット情報に対する懐疑的態度、知覚リスクなどが下位概念として位置づけることができた。そうした概念を日本の消費行動の文脈に置き換えるために定性調査としてグループインタビューを実施した。とりわけ、日本にはインターネット環境の特殊性が存在する。ブロードバンドが普及する以前に、携帯電話の普及が先行した事実は他の国に比べて非常に特殊なインターネット利用を形成している。同じネット接続に関しても、PC接続と携帯接続では利用のあり方か大きく異なっていることが想像できる。それゆえ、調査会社、アンティムの協力を受け、PCでネットショッピングを行うPC購買ユーザーと、携帯などのモバイルで購買を行うモバイル・携帯ユーザーに分類した定性調査を行った。調査の発見物は、携帯ユーザーは、PCユーザーに比べて様々なサイトを比較する傾向になく、計画購買がほとんどであった。そのことは、文脈的な情報の少ないネットにおいて、機器の利用形態の相違がリテラシーを構成する懐疑的な態度に大きな影響を与えることが予測できる。そうした結果を受けて、22年度における定量調査にむけて概念、尺度開発を行っていく。
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