本研究の目的は、新規に市場導入されたブランドにおける属性削減および属性価値の低減の効果を明らかにすることである。属性削減とは、-例えば当初多種多様な属性の追加が見られた携帯電話市場において、近年、通話機能とメール機能以外の諸機能(既存属性)を排除した「シンプルな」機種が導入されているように-あるカテゴリーにおける既存属性が新規に市場導入されたブランドに付与されないことを指す。属性価値の低減とは、あるカテゴリーにおける既存属性の価値水準が新規のブランドにおいて低減していることを意味する。こういった現象は、成熟市場においてしばしば観察される現象であるが、マーケティング研究においてその効果が検証されたことはほとんどない。 本年度は、本研究の理論的基礎を提供するべく、先行研究のレビューを行った。属性削減および属性価値低減の効果に直接的に関係する先行研究はきわめて少ない。そこで、消費者のブランド選好、ブランド選択、構造整列理論、「市場の効率性(market efficiency)」などをキーワードとして先行研究を中心にレビューを行った。この成果の一部は、論文『イノベーションおよび革新性をめぐる実体論と関係論-採用研究の系譜と展望-』にまとめた。 次に、理論仮説の構築を行った。「研究目的」に記載した基本的な仮説(新規ブランドにおける属性削減の有無と当該ブランドに対する消費者の評価との関係についての仮説)に加え、いくつかの新たな仮説(モデレータ変数として製品の複雑性を組み入れたものなど)を構築した。 また、次年度に実施予定の実験の準備として、小規模な予備的実験を行い、構築した仮説の一部の検証を行った。来年度、この結果を踏まえて再度仮説を見直し、修正、追加、削減を行ったうえで、それを検証するべく本格的な実験を実施する予定である。
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