本研究は、バランス・スコアカード(以下、BSC)をどのように利用すればどのような成果が得られるのかについて実証的に明らかにすることを目的としている。 平成23年度においては、「わが国製造企業におけるバランス・スコアカードの効果に関する実証的研究」が日本原価計算研究学会の学会誌である『原価計算研究』に掲載された。 論文では、BSCは財務業績に対して、直接的にはマイナスの効果をもつと同時に、無形資産への投資を通して間接的にプラスの影響を与えていることを明らかにしている。また、具体的な状況設定として品質管理活動を取り上げた上で、BSCが無形資産の蓄積を通じて財務業績に貢献するメカニズムをさらに詳細に検討した。本研究は、わが国企業を対象として、BSCと財務業績との関係を検証した研究となっている。 ただし、分析において、無形資産への投資を財務業績につなげるために、どのようなマネジメントが実施されているのかは十分に把握できていない。それゆえ、非財務指標と財務指標との因果関係についての先行研究を網羅的にレビューするとともに、顧客満足経営を積極的に推進する星野リゾートを対象として、顧客満足と財務成果との関係をどのように捉えているのか、かつ、財務成果を得るために顧客満足をどのようにマネジメントしているのかに関して事例研究を実施した。 事例研究の結果として、実務において、顧客満足が財務業績にもたらす影響のメカニズムは必ずしも明確に把握されておらず、結果のコントロールのみではなく、文化・理念コントロールやアクション・コントロールを含んだコントロール・パッケージにより、因果関係の不明確な状況をマネジメントしていることを示した。 なお、研究成果については、2011年10月に日本管理会計学会全国大会にて報告を行っている。
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