平成21年度は、まず、日本の農林水産省や林野庁が公表している調査報告書および統計資料や、行政、事業者、市民がパートナーシップをなして環境政策・事業を行っている国内外の環境先進地域(日本では大阪府豊中市や長野県飯田市、スウェーデンではベクショー市やルンド市)の取り組みを整理した調査報告書、著書、論文に基づいて、行政組織、事業者、市民・住民組織の3主体が協働して、木質バイオマスの利活用分(フロー)や残存量(ストック)を対象とした政策や事業に取り組んでいく方法を検討した。また、マテリアルフロー分析やライフサイクルアセスメント、環境省や経済産業省で公表されている環境(管理)会計、GRI(Global Reporting Initiative)から公表されているサステナビリティ・レポーティング・ガイドライン、バランス・スコアカードといった経済面、環境面、社会面の評価モデルに関する報告書、著書、論文に基づいて、上記の政策・事業を効果的かつ効率的に実施していくための支援システムを検討した。さらに、これら2つの検討結果や、現在地域の林業振興に取り組んでいる兵庫県内の森林組合や市役所で行ったヒアリング調査の結果に基づいて、林業に木質バイオマス事業を考慮した事業システムの実現可能性についても検討した。以上3つの検討結果により、本年度では次の2点が明らかにできた。まず1つは、上記3主体が将来的に協働して行っていく木質バイオマスフロー・ストックを対象とした政策・合意形成や施策・事業計画の作成、事業マネジメント、政策への提言や参加を支援していくための評価システムモデルであり、もう1つは、森林の機能や価値、そして森林のCO2吸収量の販売も加味して展開していく新たな事業システムとその評価システムの可能性である。以上の研究を通じて、本研究において明らかにすべき評価システムの基礎モデル(フレームワーク)が提案でき、また、次年度以降において取り組むべき研究の視点や方向性がさらに明確にできたことは、本年度の大きな成果である。
|