平成22年度は、研究実施計画に基づいて、次の2点を検討した。まず1つ目は、昨年度の研究成果、森林・林業関連の報告書、サプライチェーン・マネジメントや林業経営等の経営学の諸文献を用いて、森林・林業プロセスを明らかにするとともに、そのプロセスを支援するための評価モデル(標準原価計算モデル)を検討した。なお、この検討にあたっては、森林・林業による地域活性化策を推進している兵庫県丹波市を対象としている。もう1つは、同市の行政組織(丹波市役所)が公表している森林・林業関連施策(森林・林業振興計画)に関する報告書に基づいて、上記評価モデルの施策・事業評価への適用可能性について検討した。また、ここでは、昨年度提示したバイオマス政策・事業評価モデルとの関係性についても明らかにしている。なお、以上の検討では、現地調査や文献調査を通じて、森林・林業およびバイオマス事業に関連する物量・貨幣の両データを収集している。このように、本年度は、研究実施計画に示した森林・林業およびバイオマスの両事業プロセスに基づくいくつかのシナリオは十分に検討できなかったが、今後そのシナリオを作成するための基礎や、収集したデータに基づいて実施すべきシミュレーション評価の方法および実際の事業後の評価が可能な環境会計モデルを検討できたことは、大きな成果であるといえる。来年度は、森林・林業やバイオマス事業による地域を活性化させていくシナリオを作成するとともに、それを評価する環境会計シミュレーションシステムをビジネスモデリング、システム設計、表計算の3種類のソフトウェアを用いて構築することに努める。また、こうした成果は、本年度と同様に、論文や国内外の学会で発表する。
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