本研究の目的は、木質バイオマス事業と森林・林業を結びつけたフロー・ストック型事業モデルと、それを支援する事業評価システムを、ビジネスモデリング、システム設計、表計算の3種類のソフトウェアを用いて構築することである。平成23年度では、この目的に基づいて、数パターンのフロー・ストック型事業モデルと、それを分析・評価できるための評価システムおよびその実用可能性を研究することを計画として設定した。この計画に基づく研究の成果は次の2点である。まず1点目は、農・林業から多様なバイオマス資源が発生する青森県中南地域を対象とし、そのバイオマス資源に基づいてフロー・ストック型事業モデルを提案した。次いで2点目は、戦略的協働体系を形成して意思決定を行うことを想定した事業関係者が、上記の事業モデルをベースに作成したいくつかの事業シナリオを分析・評価し、その結果から事業対象地域に対して最適なシナリオを決定できる事業評価システムとそれを支援する評価情報モデルを、表計算ソフトウェアを用いて構築した。しかし、構築した事業評価システムと評価情報モデルといった意思決定支援のためのツールを、事業関係者に対して実際に利用してもらい、その関係者からのさまざまな意見を加味しながら改良する等、同ツールの実用可能性に関する研究は十分に実施できなかった。このように、本年度は、研究計画にある森林の機能・価値を考慮した木質バイオマス事業評価システムの実用可能性に関しては十分に検討できなかったが、このシステムを構築するための基礎モデルを提案できたことは、大きな成果といえる。今後の研究では、事業関係者と一緒になって、その事業対象地域に適した木質バイオマス事業評価システムのモデル化を検討するとともに、このモデルの他のバイオマス事業への展開可能性についても明らかにする。
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