研究概要 |
本研究は,日本における実証的会計研究で用いられるデータの特性を明らかにすることを通じて,会計研究のさらなる展開と国際的な発信能力を高めることを目的としている.本研究は,「実証的会計研究のための実証研究」として位置付けられ,わが国の実証的会計研究の頑健性・信頼性の改善を図ることを意図している. 平成21年度は,研究期間(2年)の1年目にあたり,関連研究のサーベイおよび資料収集を中心に進めた.まず,実証研究において用いられる財務データとして,日本では,日経メディアマーケティング社のNEEDS-CD ROM企業財務データが広く用いられている.そこで具体的にこのデータと企業が公表する財務諸表等の数値の関連性について,Compustat(グローバル版)のデータと比較して検討した.その結果,NEEDS-CD ROM企業財務データが独自の修正を施していることが明らかとなった.その上で,こうした企業財務データを実証分析において用いる際に,いかなる問題が生じるのかについて,利益調整の定量化指標の算定を題材として検討している.さらに,本研究では,業種分類が実証分析に及ぼす影響について考察している.日本の実証研究で一般的に適用可能な業種分類(日経業種分類、東証業種分類、GICSコードによる分類)の信頼性とその選択が実証研究に及ぼす影響を議論の俎上にあげている.これまでの分析で,日本企業においては,日経ないし東証業種分類を適用する方がより信頼性が高いことが示唆されているが,それらを組み合わせてより信頼性の高い分類基準が構築できないかについて検討している(分析は継続中である). 以上の分析結果について平成22年度に成果をまとめていく予定である.
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