平成22年度も、わが国を代表する規模と業績を有するサービス組織における原価企画的実務の観察を継続的に行った。加えて、医療、地方自治体、提携型ポイントプログラムなど、これまで観察が不十分であった幅広いサービスに対しても、現地調査を行った。さらに、サービス原価企画も含む上場サービス企業の原価管理実務を計量的に実証研究するため、アンケート調査の設計を行った。 このアンケート調査は、平成23年3月期から過去3年度を調査範囲とすべく平成23年3月下旬に郵送実施する予定であったが、東日本大震災のため、延期を余儀なくされた。その後も現地調査と意見交換を続け、多くの上場サービス企業がおおよそ落ち着きを取り戻したことが現場から示唆された平成23年11月に、調査を実施した。 平成22年度は、これらの研究活動と同時並行で、これまでのサービス原価企画の実証研究をふまえ、サービス原価企画を含むサービス組織の原価管理実務を支援する新たな技術の研究開発にも挑戦した。まず、サービス原価企画を支援する新たな工学的技術として、サービス生産性シミュレータのあり方を研究した。また、サービス分野で広く応用可能な原価計算技術のための基礎研究として、PSLXという標準データスキーマに従った原価情報システムの研究も行った。これらの研究は、査読付学術論文もしくは学会発表論文として公表されている。 なお、本科研費の中核研究であり平成21年度の研究成果である岡田(2010)は、平成22年度日本会計研究学会学会賞を受賞した。 *岡田幸彦(2010)「サービス原価企画への役割期待」『會計』第177巻第1号、63-78頁。
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