本年度は、フィールド・リサーチおよび産学有識者との意見交換を継続するとともに、サービス原価企画およびその周辺領域における会計行動と技術についての研究を行った。 個別サービス分野(地方自治体、ポイントプログラム、医療など)で特徴的な会計情報の役割について実証的な研究を進め、さらには次世代型原価情報システムについての工学的研究も行い、これらの研究成果は3本の学術論文として公刊された。また、全く新しいサービスが構想・事業化される際に会計システムがどのように設計されるのかという会計デザイン問題にも注目し、最も近いビジネスモデルにおける会計処理等を参考に自身の会計デザインを行うという興味深い行動を発見することができた。なおこれらの研究は、本科研費の研究成果として整理・体系化されたサービス原価企画理論(岡田(2010)「サービス原価企画への役割期待」『會計』)でいう「仮説検証とサービス進化」の段階に関するものであり、今後さらなる実証的研究の発展が期待される。 一方、東日本大震災のため、当初予定していたわが国上場サービス企業へのアンケート調査とその実証研究が大幅に遅れてしまった。調査自体は無事に終了し、有効回答企業数も100社を超えているため、今後はこのデータをもとにサービス原価企画を中心としたコストマネジメント行動についての確認型実証研究を進め、その成果を学術論文や著書にまとめる作業を継続していきたい。
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