研究概要 |
本研究の目的は、日本市場の新規株式公開(Initial Public Offerings,IPO)に特有の要素(たとえば、子会社の支配権を維持したまま上場させるといった特徴的なガバナンス構造とそれに関連すると思われる行動)を取り込んだ新しい視点から、各IPO企業の個別リスクを推定し、それがIPOアノマリー(公開価格、市場におけるプライシング、公開後の中長期パフォーマンス)に与える影響について明らかにすることにある。2年目にあたる本年度は、初年度において拡張したデータベースをもとに基本的な変数の算出を行い、初年度に構想した仮説に基づき、解析を進めてきた。その結果をもとにかなり予備的な段階ではあるが2本ワーキングペーパーとして仕上げ、主に会計の研究者が多く参加する2つの査読付き国際会議(The 33rd annual congress of European Accounting AssociationとThe 22nd Asian-Pacific Conference on International Accounting Issues)において発表を行った。そこで得られたコメント等を考慮して再検討した結果、IPO前の価値評価の基準として使用する類似企業の選定を再度行うとともに、IPO前の評価とIPO後の中長期株価パフォーマンスと関連づけることで、新たな仮説を追加することが可能になり、最終年度に向けてさらに分析を深めるという方向性を明確にすることできた。
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