研究概要 |
本研究の目的は、日本市場の新規株式公開(Initial Public Offerings,IPO)に特有の要素(たとえば、子会社の支配権を維持したまま上場させるといった特徴的なガバナンス構造とそれに関連すると思われる会計行動)を取り込んだ新しい視点から、各IPO企業の個別リスクを推定し、それがIPOアノマリー(公開価格、市場におけるプライシング、公開後の中長期パフォーマンス)に与える影響について明らかにすることにある。 課題最終年にあたる本年度は、過去2年間の成果(IPOや株主によるガバナンスに関する研究成果を融合させた仮説の設定,および実証モデルの構築、実証分析を行うためのデータ収集およびデータベース構築)を基に、具体的な成果として論文(ワーキングペーパー)2本の執筆に取り組んだ。また、これらのワーキングペーパーを査読付きの国際ジャーナルに投稿するのに十分、頑健なものとするために、アジア、アメリカ、ヨーロッパで活躍する研究者が多数出席する会計とファイナンスにおける代表的な国際会議における口頭発表(英語)を合計2回行った(2011年4月にローマで開催されたEuropean Accounting Association 34^<th> Annual Congressおよび7月にマカオで開催されたAsian Finance Association 2011 International Conference)。また、国内のワークショップでの発表も1回行った。これらの発表に対して討論者や参加者から受けたさまざまなコメントや質問をもとに全体的な見直しを行い、実証分析を追加するとともに、各論文の論旨をより明確にするよう改訂を行った。このうち1本については、3月初旬時点で査読付き国際ジャーナルに投稿、もう一方も投稿に向け最終段階に入ることができた。
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