研究概要 |
グローバル・ガバナンス論の特徴・論点および会計への含意を明らかにし,IASBが基準間競争を容認しない背景についてグローバル・ガバナンスの観点からの解釈を試みた。その結果,国際的な会計基準の設定という国境を越えて生起する問題に対処しようとするIASBには,市場メカニズムだけでは効率的に対処できないという問題意識があるが故に,高品質の会計基準の選択の手段として市場メカニズムを利用することに否定的であり,基準間競争を容認しないと解釈できることが明らかとなった。 さらにIASBの説明責任について検討した。その結果,委託・受託関係のもとでの説明責任(内的説明責任)のみならず,IASBの活動によって影響を受けるさまざまな利害関係者に対する説明責任(外的説明責任)も重要であり,利害関係者はIASBに何らペナルティを課すことができないため正式な強制力がないなかで外的説明責任が果たされるのかという問題が生じること,さらには,長期的には外的説明責任が実質的なものとなった場合にのみIASBによるグローバル・ガバナンスは正統性をえるにもかかわらず,外的説明責任が果たされないならばIASBの正統性が毀損されうるということが明らかになった。
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