研究概要 |
本年度は,アメリカの金融商品会計基準における有価証券の公正価値評価の問題を取り上げ,概念フレームワークとアメリカの金融商品会計基準の規定との論理的整合性を検討した。 概念フレームワークでは,活発な市場の存在を前提として,実現可能基準が規定されている。活発な市場がある場合には実現可能基準が適用されて評価損益が認識されるのに対して,ない場合には適用されず評価損益も認識されることはない。このような活発な市場の有無によって実現可能基準が適用されるか否かが変わり,それによって測定属性も異なってくるのである。 このように考えるならば,本来,金融危機を誘発するような評価損の連鎖は生じないはずであるが,上記のような測定属性の変更が行われなかったのは,概念フレームワークで規定されている実現可能基準による評価損の認識について,アメリカの金融商品会計基準では十分に考慮されていなかったことが原因であると考えられる。さらに,このような実現可能基準による認識が看過された背景には,アメリカの金融商品会計基準の設定過程において,フローの認識よりもストックの評価の議論が先行したことがあったと推察できるのである。
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