研究概要 |
本研究目的の出発点として,サプライヤーの選別からモニタリング・評価に至るプロセスを双方向的かつ動態的な視点から記述することを初年度の計画とした。既存研究では,組織間取引の「統治構造」に着目した研究が多く蓄積されている。しかし,それでは,静態的な分析枠組みの中でしか議論を展開できず,どのような管理会計情報が用いられているのかを明らかにできないという限界をもつ。これに対し,本研究ではサプライヤーの選別からモニタリングと評価を含むインタラクティブなプロセスに焦点を当てることによって,既存研究のもつ限界を克服し,実践的な理論構築に貢献することを意義とする。 そこで,まず本年度は,上記の各段階において,どのような会計情報(あるいは非会計情報)が重視され,どのように利用されているのかについて,本年度は,以下の2つの方法で調査研究を行った。1つは,アーカイバルデータを用いて,卸売業種におけるABCの組織間での利用について,コストビヘイビア分析を実施した。ここでは,ABCによるコスト情報だけでなく,非財務的な情報(活動)がABM的な影響をもち,組織間での経営資源の有効な利用を示唆する結果となった。この成果は,ヨーロッパ会計学会で報告するとともに,現在論文の修正にあたっている。なお,会計プログレスの当年号に掲載された論文は,本調査の予備的な位置づけにあたる。もう1つは,原価企画に関するインタビューである。本調査の成果は,日本原価計算学会で報告を行ったが,原価企画全体を対象とし,サプライヤーとの関係性については,それほど詳細な記述ができなかったため,次年度もさらなるインタビューを実施予定である。以上のように,対象企業の選定と調査許諾に時間を要したものの,概ね当初計画に基づいて実施できたと考えている。
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