本研究においては、地方独立法人化が進められている我が国の公立大学において、その予算システムが、従来の自治体の一部としてのあり方から、法人化後どのように変化しているかを明らかにすることで、地方独立行政法人たる公立大学法人における予算システム(予算編成・予算管理)のあり方の解明を目指している。研究開始年度である平成21年度より、その研究目的を果たすために、以下のような研究を行った。(1)公立大学実態調査のデータを入手し、公立大学間の財務状態について比較検討を行った。(2)現在進められている公立大学の法人化について、各大学の定款等の資料を入手し、定性的な視点から分析を加えた。(3)公立大学の実態を把握するために、複数の公立大学に対する訪問調査を行った。(4)公立大学を設置する自治体への地方交付税交付金の措置のあり方を解明する手がかりとして、関連団体へのインタビュー調査および地方交付税関連の資料収集を行った。(5)高等教育機関への予算配分の在り方を解明するために、イギリス、イタリアおよびドイツにおける調査研究を行った。 本研究の成果としては以下のことが挙げられる(1)自治体から公立大学に対する予算配分の在り方は、大学によって大きな違いがあり、自治体ごとに異なる事情が運営費交付金の在り方に反映していること。(2)我が国において先行して法人化した国立大学と比較すると、運営費交付金の交付の在り方は多岐にわたっている。(3)諸外国の予算配分の方法と比較しても、設置自治体からの予算配分の在り方には特徴がみられること、等である。本研究は公立大学法人に対する予算配分の特徴を明らかにすることで、公的機関の会計や財政の在り方を考える上での重要な知見を得ることが出来た。またしばしば国公立として一括りにされがちな公立大学について、その設置の意義や特徴を明らかにするのに役立つ知見を併せて得ることが出来た。
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