IFRSの各国導入に際して問題とされている連単分離に関して、平成23年度は、成果公開を中心に研究を行った。その内容は、次のように要約できる。 ドイツにおける商法典の会計規定と資本市場向け会計基準として導入されたIFRSとの関係、そして日本における会社法の会計規定と金融商品取引法のもとでの会計基準との関係に関して、日本よりもドイツのほうが2つの法律のもとで規定されるルール間の相違が大きい。その主な要因のひとつは両国における債権者・株主・投資家の保護の強弱にあり、このことが両国の連単分離方法の相違を生み出す原因ともなっている。この法と会計の問題の一部は、論文「ドイツにおける財務報告」ほかで公表した。 本年度はさらに、IFRS教育という視点からも連単分離の問題にアプローチし、「大学においてIFRSをいかに教えるか-連単分離のもとでのIFRS教育に関する考察」と題した学会報告を行ったのとともに、「ドイツにおけるIFRS教育」として論文を公表した。また、論文「グローバルな会計基準設定とIFRS導入」、共著書『IFRS導入のコスト分析』、および共著論文「IFRS適用に関するアンケート結果の概要(1)」では、グローバル・レベルにおけるIFRSの形成とその国家レベルでの執行における環境変化を分析し、本研究を取り巻く環境の変化をも取り扱った。 最近公表された日本の退職給付会計基準では、個別と連結とで異なる会計処理が求められることとなった。このように、程度の差はあれ、日本もドイツと同様、連単分離の会計処理が要求されるようになっており、この問題を継続して注視していく必要がある。
|