研究課題
[当年度に実施した研究の成果の具体的内容]平成21・22年度におけるモデル分析や判例、歴史的観点に立った検討の結果、利益の有用性を構成する要素についてその役立ちを考察するには、自己創設のれんの配分と利益測定との関係を明らかにする必要があることが判明した。そのため当年度では、自己創設のれんの利益測定との関連及びその資産性を明らかにするために、のれんに関する判例が確立し、のれんに関する会計専門家による議論が行われ始めた19世紀後半に立ち返って検討を行った。その結果、自己創設のれんについては、財務報告の対象から除かれるべきであると当時から考えられていたことが明らかになったが、同時に、同じ自己創設のれんであっても、支出の事実の裏付けが確認できる場合については財務報告の対象に含めるべきであるとも考えられていたことが判明した。資産性の有無ないし財務報告の対象となり得るか否かの基準は、買入のれんか自己創設のれんかではなく、支出の事実を確認できるか否かという点に置かれていることが明らかとなった。[当年度に実施した研究の成果の意義・重要性等]当該研究の研究目的は、利益の有用性が会計利益のどの要素に起因するかを明らかにし、会計利益が投資家の将来利益の予測ないし企業評価になぜ役に立つかを理論的に検討することにある。当年度に実施した研究の結果、財務報告の対象に含まれる要素か否かを判断する基準について、のれん会計が議論され始めた当時においては、今日に一般的に考えられているような、買入のれんか否かという点にあるのではなく、支出の事実の有無という点に置かれていたことが確認された。これは、利益の有用性という概念が確立する以前における財務報告の特性の一つが明らかになったものと考えられる。自己創設のれんが財務報告の対象から排除される点については、当時から現在まで続く考え方であり、その点で、時代の変遷を経てもかわらずに存在している財務報告の基礎的な概念の確認につながると期待される点で、重要な論点であると考えられる。
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GEM (Gakushuin University), Discussion Paper
巻: 11-1 ページ: 1-33
巻: 10-2 ページ: 1-29