本研究では、監査人が企業の有しているリスクをどのように有効に識別、評価しリスクに対応するのかについて、不正リスクの評価を細分化して捉えることにより、理論的かつ実証的に解明することを研究目的としている。当該年度においては、(i)不正リスクの概念フレームワークの確立、および(ii)不正リスク評価の判断指標となる評価要因の解明を行い、次年度以降の研究課題の基礎となる理論的研究を行った。 不正リスクにかかる監査人の判断研究を行うにあたっては、まず、監査の計画および監査手続の実施において中核となる、監査における重要な虚偽表示のリスクの捉え方が重要となる。そこで、監査保証基準審議会(IAASB)が公表している国際監査基準の規定内容を分析し、わが国の監査基準との規定内容の比較を行うことにより、不正リスクを含む重要な虚偽表示のリスクについての監査人の判断形成を理論的に探究した。 監査基準においては、不正リスク評価の重要性が指摘されているものの、当該リスクがどのような要因によって決定づけられるのかについて明確に概念を規定していない。そこで、本研究の概念フレームワークの構築にあたり、監査先進国の最新の研究成果等の文献研究を通じて理論的に分析することにより、不正リスク評価の判断を構成する監査契約リスクおよび、個々の不正リスク要因の位置づけを探究した。
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