本研究の目的は、監査人が企業の有しているリスクをどのように有効に識別、評価してリスクに対応するのかについて、不正リスクの評価を細分化して捉えることにより、理論的かつ実証的に解明することにある。 企業の不正リスクを評価するためには、不正に関与しようとする動機やプレッシャーの存在を示す事象、不正を実行する機会を与える状況などを識別し評価する。しかし、多くの事象や状況を網羅的に検証し、単に個々の要因の有無やリスクの大小を検討するだけでは、監査を有効に実施することにはならず、監査資源の投入量を増加させ、コストが許容範囲を超えることにもなりかねない。 本年度は、不正リスクの評価を行うにあたり、監査人がどのように企業の有する潜在的なリスクを識別し評価しているのかについて文献研究を網羅的に行い、不正リスクの概念を構築するにあたっての理論研究を行った。最終年度には、現実にいかなる評価が行われているのか実証研究を行う予定であり、本年度の研究はその基礎となる。
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