平成21年度は、文献・訪問調査期間として、主として文献調査及び国内の企業及び研究機関への訪問調査を実施した。顧客価値の測定に関してはマーケティング分野での研究成果が数多く存在するため、本年度は先行文献の収集および研究に多くの時間を費やした。その結果、マーケティングと管理会計分野における顧客価値の概念の違い及びその歴史的変遷に関する理解を深めることができた。具体的には、管理会計における顧客価値概念が1960年代および1970年代のセグメント会計に源流を発する単年度の顧客別収益性分析に基づくのに対して、マーケティング分野における顧客価値概念は顧客志向、リレーションシップ・マーケティング等に源流をもつ複数年度の顧客生涯価値の算定に重きが置かれている。また、その金額の測定にあたり非財務尺度が多用される点にも違いがみられる。以上の点および両者の統合について異分野の研究者との意見交換のために国内3大学を訪問し、複数企業(首都圏の小売業4社、電鉄.航空会社3社、沖縄のホテル3社等)へのインタビューを実施した。当初の予定では国内に加えて海外の研究機関を訪問する予定であったが、訪問予定時期が新型インフルエンザの流行時期と重なったため断念し、代わりに企業の現状を明らかにするために予備的なアンケート調査を実施した。アンケート調査の結果は、日本管理会計学会(2009年度全国大会)で報告した。また、来年度の報告のために、日本会計研究学会スタディグループ研究会(2010年)および日本組織会計学会2009年度第4回研究会(2010年)の2度にわたり研究報告を行った。本年度の成果論文としては、企業会計(2010年5月号)へ論文を投稿済みである。
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