平成22年度は、初年度に実施した質問票調査の分析を実施すると同時に、最終年度の実施予定の質問票調査のリサーチデザインの構築に向けた研究を行った。まず、初年度の質問票調査の結果については多変量解析を用いた分析を行い、価格のコントロール(広義のレベニューマネジメント)というプロモーション手法が、顧客価値の構築過程においてポイントプログラムなどのプロモーション手法とは異なる効果を有していること、複数のプロモーション手法を併用することで顧客価値の向上に正の効果があることを明らかにできた。この結果については国際学会における報告(1回)を含めて合計3回の学会報告を行い、論文として投稿した(近刊)。これらの学会報告及びその後の質疑応答等の意見交換を経て、貴重な知見を得ることができた。 上記の作業と並行して、最終年度の実施予定の質問票調査のリサーチデザインの構築に向けた研究を実施した。初年度の質問票調査においては、キャパシティの制約という条件が顧客価値に及ぼす影響を反映できなかったためである。キャパシティマネジメントに関する国内外の文献をサーベイすると同時に、キャパシティが制約されている典型的な業界である航空業界、ホテル業界に対して数回のヒアリング調査を多数実施した。ヒアリングに多くの時間を割いたのは、入手したキャパシティマネジメントの文献の多くが製造業を想定していたためである。このため、文献で得た知識がサービス業においても適用可能であるか、ヒアリングが必要であった。また、レベニューマネジメントの導入支援を行っている企業を2社訪問し、その導入過程で生じる問題点について議論を行った。本年度のこれらの研究を経て、最終年度に実施予定の質問票調査を作成するための理論的枠組がある程度整ったと考えている。
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