研究概要 |
平成22年度の研究は,IFRSの利益計算の本質とドイツを中心とした欧州諸国の税務規定に関する文献研究を中心に進めてきた。また,これと平行して,ドイツ,ミュンヘンおよびデュッセルドルフにおける,文献収集並びにヒアリング調査を実施した。 まず,IFRSにおける利益計算の本質についてであるが,いわゆる純利益の放棄に伴う包括利益のみを思考する理論体系への変容について,その基礎理論(いわゆる資産負債アプローチ)そのものの問題点が明らかとなった。さらに,本質的な問題ではないにせよ,理論と実務の乖離が生じている以上,どこかで妥協が必要となることは致し方ないところであるが,その制度上の妥協点が必ずしも明確なものではいために,ある種の混乱が生じている。 一方,欧州諸国の税務規定は,例外なく会計上の利益を出発点として計算されていることが明らかとなり,そのため,程度の差こそあれ,税務規定は会計規定に影響を受け,場合によっては会計規定に影響を及ぼすことすらある。この点は良く知られ手いる事柄であるが,問題はその影響の仕方が,実際には一般に理解されていることとは少し違った形で存在しているという点である。 以上を踏まえ,IFRSがドイツにどのような形で導入され,あるいは,導入されつつあるのか,さらに,今後どのような方向に進むのかについて,文献収集とヒアリング調査を行った。同時に,ドイツの税制が,EU加盟国の一員として調和化の方向にあることも確認された。
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