研究概要 |
バランスト・スコアーカードの活用状況が異なる2病院を対象としたアンケート調査を実施し、病院職員の意識および満足度における病院間の差を明らかにした。本アンケート調査では、バランスト・スコアカードを3年以上活用している福井県済生会病院、そして活用が3年未満の敬愛会中頭病院・ちばなクリニックを調査対象とした。アンケート票の回収結果は、両院合計で2,149件のうち1,913件を回収し、有効回収率は89.02%であった。分析方法には共分散構造分析による多母集団の同時分析をおもに用いた。具体的な発見事項としては、敬愛会中頭病院・ちばなクリニックでは自律性から学習意識に対する影響力が統計的に有意に強く、福井県済生会病院では学習意識から戦略意識および職員満足度に対する影響力が統計的に有意に強いことがわかった。このことは、バランスト・スコアカードの活用初期段階(活用3年未満)では自律的な文化を醸成しながら学習志向の組織を構築しようとする傾向があり、活用成熟段階(活用3年以上)では職員の学習によって戦略意識や職員満足度といったより具体的な成果を達成しようとする傾向があることを示唆している。バランスト・スコアカードを動機づけまたは意識づけのツールとして効果的に活用するために、その活用方法を段階的に変化させていくことは重要である。バランスト・スコアカードの活用段階の違いによる効果の差を明らかにした点は、バランスト・スコアカード研究において理論的にも実務的にも意義があるといえる。
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