研究概要 |
昨年度からの経年調査として、バランスト・スコアカードの活用状況が異なる2組織を対象としたアンケート調査を実施し、職員の戦略意識および職員満足度の経年的な変化を明らかにした。本アンケート調査では、バランスト・スコアカード活用の成熟段階にある福井県済生会病院、そして活用の初期段階にある敬愛会中頭病院・ちばなクリニックを調査対象とした。各組織の回収件数は、福井県済生会病院が1,015件、敬愛会中頭病院・ちばなクリニックが921件であり、両組織合計で1,936件を回収しだ。一分析方法は、Dunnettのt検定による多重比較を用い、両組織ごとの経年的な変化を統計的に分析した。具体的な発見事項としては、バランスト・スコアカード活用の成熟段階にある福井県済生会病院では、財務意識尺度、戦略目標の達成度尺度、および職場溝県度尺度において有意な増加傾向が存在するごとがわかった。他方で、バランスト・スコアカード活用の初期段階にある敬愛会中頭病院・ちばなクリニックでは統計的に有意な変化傾向を確認することができながった。このことは、バランスト・スコアカードを導入しその成果が安定的に発現するまでにはある程度の期間を要することを示唆する。また、戦略意識の改善にともなって、職場に対する満足度の向上が同時に観測されていることから、職場環境の改善が戦略意識の改善に何らかの関係があることが予測される。バランスト・スコアカードの活用段階の違いを軸に戦略意識および職員満足度の経年的変化を明らかにした点は、バランスト・スコアカード研究において理論的にも実務的にも意義があるといえる。
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