平成21年度前半は、移転価格税制(とりわけBAPA)を扱った理論及び実証文献を調査し、それらの文献の論点を整理した。理論文献については、BAPAを最初にモデル化したTomohara(2004)と最新の理論論文であるWaegenaere et al.(2007)の2つが本研究と密接に関わっているため、この2文献を詳細にサーベイすることから開始した。 サーベイ終了後、Tomohara(2004)及びWaegenaere et al.(2007)で外生的に取り扱われていたBAPAによって決定される移転価格を内生的にモデル化した。モデル化の方法としては、税収を最大化する課税当局が多国籍企業の行動原理を織り込んで、ナッシュ交渉解等により移転価格を決定するという構造である。分析の結果、実際にBAPAで決定される移転価格はどのような水準か、またそこで決定された移転価格はどのような変数によって影響を受けるのかについての性質が明らかになった。 平成21年度後半は、国際学会で報告するため、日本語で書いた論文を英語に翻訳し、平成22年8月にサンフランシスコで開催されるアメリカ会計学会(2010 AAA Annual Meeting)に投稿した結果、論文が無事アクセプトされたため、8月に報告する予定である。この学会は、会計学では世界一権威のある学会なので、論文がアクセプトされたことは今後の学術誌投稿を考えたときに、大きな意義があると思われる。 研究実施計画と照らし合わせてみても、研究は順調に進んでおり、平成22年度の学会発表および学術誌への投稿に向けて準備を進めている状況である。
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