交付申請書に記載していた研究の目的は、(1)保守主義についてのモデルを構築し分析すること、(2)モデル分析から生まれる仮説を実際のデータに照らして実証研究すること、(3)同様のテーマに関する海外の研究動向を調査し今後の発展可能性や方向性を探ること、であった。平成22年度は、上記のうち、前年度に引き続き(1)を発展させてより大きな国際的な学会の場でブラッシュアップさせたとともに、イエール大学のサンダー教授との交流などにより(3)を実施した。 具体的には、前年度に構築した保守主義のモデル分析をさらにブラッシュアップし、カナダ会計学会(5月)とアメリカ会計学会(8月)の全体総会において、著名な研究者である理論家のサバック教授(アルバータ大学)、実証家のバス教授(テンプル大学)をそれぞれディスカッサントに迎えて発表した。サバック教授からは、本研究に留まらず学会の保守主義モデル研究全体に関して数理的な欠点を指摘され、一方、バス教授からは、本研究のモデル分析に具体的な背景を強調しなければ実証研究家に対してアピールできないことを指摘された。このため、モデル分析を実証研究で試すという当初の平成22年度予定を後回しにし、さらにモデル分析を発展させるとともに、後の実証研究の仮説を形成するべき理論研究のひとつをアジア太平洋国際会計学会において発表した。その結果、アジア太平洋学会(11月)では、バス教授からの宿題であった具体的な会計問題の中でモデルを位置づけることに成功したらしく、プレゼンテーションでは大変な好評を得たようであった(外国の他大学から移籍の話を持ちかけられるなど含めて)。その後、平成22年度末期である1月から2月にかけて、招待聴講を許されたイエール大学のシャム・サンダー教授の大学院授業において、科研費課題に直接的間接的に関わる論点を議論とともに勉強させていただいた。 この間に、前年度の成果が中央経済社から出版された書籍の1章分として公表された(6月)。
|