研究概要 |
本研究は、知識創造化社会の進展を背景として、企業の持続的競争優位の中核をなす人的資本に焦点を当て、従業員重視のマネジメントにおける人的資本の測定・開示はいかにあるべきかを理論的かつ実証的な側面から体系的に研究することを目的とするものであった。 本年度は、本研究課題の最終年度に当たるため、人的資本の測定・開示の理論的フレームワークとはいかなるものであるのかについて研究の深化を図った。具体的には、前年度の国際会計研究学会および日本会計研究学会で報告を行った内容について、それぞれ学術雑誌である国際会計研究学会年報および会計に研究成果を公表している。 人的資本の測定・開示については、多くの理論的な研究がなされてきている。たとえば、Andrew Mayo, 2012, Human Resources or Human Capital? - Managing People as Assets, Gower Publishing Limitedや、Tim Giehll, 2011, Human Capital Financial Reports, Shamber Rose Publicationsなどである。現在、上記の文献を含めて、人的資本の財務報告がいかにあるべきかについてさらに検討を進めており、学会等で報告する予定にしている。 本研究を通じて指摘できる点は、次の2点である。1つは、人的資本会計の今後の方向性として、現在各国で研究が推し進められている「統合報告」の一領域として、人的資本に係る非財務情報の開示を拡充化していこうとするアプローチが指摘できる。もう1つは、人的資本会計は、人的資本を含めたより大きな自己創設無形資産の会計の一領域であると捉えて、自己創設無形資産会計の体系化を図ることで人的資本会計の位置づけや認識、測定、開示/表示のあり方を示すアプローチが指摘できる。 かかる意味で、人的資本の測定・開示に関する研究は、今後の展開可能性を大きく秘めた領域であると指摘することができる。
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