1.今年度の研究実施概況 (1)徴兵制・職業紹介・戦後開拓に関する先行研究の収集・検討(平成21年7月~12月) 今年度は、兵役経験による職業経歴の断絶と再形成過程を理解するための基本的な資料として、社会移動研究、労働史、社会政策史領域における徴兵制、復員者に対する職業紹介、戦後開拓地の斡旋に関する先行研究を網羅的に収集し、いまだに解明されていない課題を明らかにするために、批判的に検討した。 (2)史資料収集調査(平成21年8~10月) 国立国会図書館・国立公文書館・早稲田大学図書館・東京大学附属図書館において(1)兵役経験者の就職問題、(2)労働行政・労働保護、(3)戦後日本人のライフコースに関する諸調査、(4)企業史、(5)戦後開拓史、それぞれに関する資料収集調査を実施した。これらの資料は、上記5つのカテゴリーに整理・分類した。 (3)ライフヒストリー・インタビュー調査(平成21年8月・10月) 青森県黒石市、岩手県滝沢村において、戦後緊急開拓事業のもとに入植した旧軍隊関係者、旧満州・樺太からの引揚者を対象に聞き取り調査を実施した。聞き取りの内容はテープ起こしを行い、文字化した。 2.研究の進捗状況 今年度は基礎的資料の収集・分析を進め、聞き取り調査の対象者とのラポールを形成し、今後の調査研究の基盤整備に努めた。聞き取り調査は継続的に行い、現在にまで至る人的ネットワークを解明する。今年度末には本研究の第一の成果として、子ども期から兵役に至る青年期の構造を図式的に整理した論文を発表した。次年度以降、資料の分析、聞き取り調査から明らかになった点を順次学会等で発表する。
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